新卒採用は、高校・専門学校・大学の卒業予定者を対象とした採用です。第二新卒(就職経験があるものの学校の卒業から3年以内の人材)を新卒採用に含める場合もあります。
採用には新卒採用と中途採用があります。それぞれの違いは以下の通りです。
■新卒採用と中途採用
新卒採用 | 中途採用 | |
採用対象 | 学生(第2新卒) | 社会人経験のある求職者 |
採用開始時期 | 広報解禁時期:3月 選考解禁時期:6月 内定通知:10月 | 通年(時期に定めなし) |
採用活動期間 | およそ半年〜1年間 | およそ3ヶ月〜半年間 |
その他 | ポテンシャル採用がメイン | 即戦力採用がメイン |
ベンチャー企業や中小企業、外資系企業の新卒採用は必ずしも上記の通りではありません。また、4月に一斉入社するのは日本独特の慣習で、例えば、アメリカ、韓国、中国、インドなどでは、卒業後すぐの入社割合が50%程度です。
新卒採用のメリットを中途採用と比較して紹介します。
■新卒と中途採用のメリット・デメリット
新卒採用 | 中途採用 | |
メリット | ・企業文化に馴染みやすい ・人件費が安い | ・即戦力となる可能性が高い ・基本的な社会人教育が不要 ・採用までの期間が短い |
デメリット | ・即戦力になる可能性は低い ・基本的な社会人教育が必要 ・採用までの期間が長い | ・企業文化に馴染みにくい ・人件費が高い |
新卒採用と中途採用は一長一短で、一方のメリットがもう一方のデメリットとなることが多くあります。バランスよく2つの採用を行うことが、組織の活性化に効果的です。
新卒採用のフローは「集める」「選ぶ」「動機付ける」の3ステップに分けられます。
集める
“エントリー”や“説明会”は一般的に3月1日に解禁となります。その前に、プレ認知として、採用に直結しない広報(電車広告やCM)やインターンシップを企業の認知レベル向上や興味獲得のために実施する企業もあります。
選ぶ
書類選考は履歴書やエントリーシートによる審査です。また、面接は通常複数回実施されます。このフェーズで性格検査や能力検査が加わることもあります。
動機付ける
一般的に就活生は、内定直後に入社意欲が向上しますが、その後に他社の選考状況の変化や、親を含む周りからの助言により、入社に悩みが生じます。よって、内定辞退を回避するために、入社へより強い動機付けが必要となります。
採用スケジュールに関連してよく耳にする、経団連の指針を紹介します。
■経団連の指針まとめ
・大学3年生の3月に広報解禁、大学4年生の6月に選考解禁、大学4年生の10
月に内定解禁
・経団連は2018年に上記指針の廃止を発表(指針適用は2020年4月入社まで)
・2021年4月入社以降は政府主導で就活ルールの策定をすることに
政府は、2021、2022年に引き続き、2023年4月入社についても、経団連の指針踏襲を発表しました。
■2023年卒の採用活動にも踏襲される就活ルール
大学3年生3月1日 広報解禁
大学4年生6月1日 選考解禁
大学4年生10月1日 内定解禁
経団連の指針時と同様に、この就活ルールは違反時も注意や社名の公表程度で強制力はありません。
志望する企業によって大学3年生の動きは大きく異なります。就活ルール遵守企業とそれ以外に分けて紹介します。
自己分析や業界・企業分析とともにインターンシップへの参加がメインです。志望する業界や職種を絞りきっている学生は少なく、興味のある業界や企業のインターンに広く参加し、進路の方向性を定めていくことが一般的です。
大学3年生のうちにほぼ全ての外資系企業の採用は終了します。特に外資系企業は夏のインターンシップに参加した学生のうち評価が高い学生を、通常とは異なる特別な採用フローで選考することが一般的です。
このフローに乗った学生は、上記の表よりも早く内定を獲得します。また冬のインターンシップを開催する外資系企業の場合、12月あたりまでにインターンシップを終えてこちらでも優秀な学生を通常とは別の採用フローで選考することがあります。
インターンシップは就業体験を指します。「大学等での学修との結びつけや、主体的な職業選択・高い職業意識の育成」をその目的に掲げており、よって政府は企業に対して、採用直結型のインターンや会社説明会と内容が変わらないインターンの禁止を要請しています。
一方、企業にとってインターンシップは大きく3つの目的があります。
1)離職の防止
自社の雰囲気や社員との触れ合いを通して、入社後に生じるギャップを抑えることで、離職の防止に繋げる。
2)人材の選定
面接等、限られた時間では難しい優秀人材の選定を行う。
3)人材の育成
インターンを通して、採用候補となる学生の育成をする。
特に外資系企業は「2)人材の選定」の目的が強く、インターンシップで評価が高い学生を非公表の選考ルートに乗せて早期に内定を出します。よって外資系企業を目指す学生にとっては、インターンシップは職業体験でなく選考フローの1つであり、インターンシップに参加せずに本選考で内定を得ることは非常にハードルが高くなります。
企業によって求める人材は異なりますが、外資系に内定を得る学生は一般的に多くの企業で需要がある人材です。
上記の通り、外資系企業は大学3年生のうちに内定まで出すので、それよりも採用スケジュールが遅い企業は、夏のインターンシップで自社の魅力をどれだけ伝えられるかが勝負となります。
特に短期のインターンシップでは学生の志望度を向上させることは難しく、長期でかつ内容の凝っているインターンシップを企画することが重要です。
大学4年生で本格的に就職活動している学生は、主に上表のスケジュールで動きます。外資系や一部の内資系企業では内定が出し終わっており、大学4年生時は就活ルールに従う企業のハイシーズンになります。
面接は大学4年生の6月から解禁となりますが、同時に内々定のコマが6月から伸びています。これは、就活ルールに従うとされている多くの内資系大手企業でも、6月1日に内々定を出す企業が多く、それまでの選考は、リクルーターや面談と称した選考フェーズで実施されます。
採用フローは幾つにも分かれて実施されていますので、就活ルールに従う企業が最も早期に出す内々定が6月1日であり、その後も順次内定を出していくことが一般的です。
上記は就活ルールに従う企業の採用フローの一例です。広報解禁日である3月1日は各企業の採用担当者や新卒求人サイトを運営する企業にとって緊張の瞬間で、各媒体が正常にリリースされているか、確認作業に追われます。
選考解禁日は6月1日ですが、これは面接フェーズの解禁日です。書類選考も選考の1部ですが、時間や場所を指定せずに学生の任意の時間に対応できる“エントリーシートの作成”、“オンラインによる適正・能力検査”、“動画録画型の面接(録画面接)”などは、6月1日より前であっても就活ルールに抵触しません。
内定解禁日は10月1日ですが、記述した通り、多くの企業は「内々定」ということで、10月以前に就活生に内定の意思を提示します。これは就活生に採用意思があることを早期に示すことで、入社意欲を高めてもらう狙いがあります。
内定と内々定はほぼ同じ意味ですが、法的な観点では「内々定」に法的拘束力は生じませんが、「内定」には原則的に法的拘束力が生じます。
既述した通り、外資系企業の多くは大学3年生の3月時点でほぼ内定を出し終えます。同じく日本のベンチャー企業や中小企業の中には、外資系と採用スケジュールを合わせる場合もありますが、3月時点で外資系企業から内定が出なかった層の獲得に向けて、4月頃に内定を出すスケジュールで動き出す企業も多くあります。
ベンチャーや中小企業が、外資系企業を目指す学生を獲得しにいくのは大きく3つの理由があります。
1つ目:外資系を目指す学生層には、いわゆる“優秀層”が多いから 2つ目:”UP or OUT”(“成長や昇進し続けるか、辞めるか”)という厳しい環境に身を 置く覚悟のある学生を採用したいから 3つ目:内資系大企業の採用が動き出す前に内定を出したいから |
また、ベンチャー企業や中小企業の中には、3月1日に広報解禁日は就活ルールに合わせて、選考解禁日と内定解禁日を前倒しする企業も多くあります。3月1日より前に広報を開始しても、多くの学生は就活モードでなく、採用の母集団形成ができないことがその理由です。
選考解禁を早くすることで、「大手志望だが早めに面接の練習をしたい」といった学生に応募してもらい学生と接点を持つことで、自社への動機付けをして興味関心を高めてもらうこともよく見られる採用戦略です。
新卒採用の具体的なスケジュールとして、以下の表では第3タームまで示していますが、企業によっては1タームで終了する場合もあれば、第4ターム以降を設ける場合もあります。
タームを分けて採用するメリットとしては、選考や内定(内々定)承諾の状況、就活生の質などを確認しながら、採用を継続できることが挙げられます。
■応募受付
就活生のほぼ100%が就職ナビを利用しており、ナビを通して応募(エントリー)することが一般的です。ナビへの掲載料は最も基本的なプランで100万円程度ですが、付加するオプションに応じて大きく変動します。
■説明会
説明会は単独の企業説明会や合同企業説明会など様々な形態があります。合同説明会は業界軸や企業規模、海外展開の有無、また対象学生の属性別など様々な種類があります。
例えば業界別であれば、志望度が高い学生にアプローチできる可能性は高まりますが、競合企業と直に比較されますので、説明内容に深く配慮する必要があります。
■面接
面接で重要なことは、面接官の個人的な判断軸で評価をしないことです。よって、組織として採用したい人材を明確にして、その人材を採用するために、各面接フェーズで評価する項目とその評価方法をすり合わせることが重要です。
■内々定・内定・内定者フォロー
内々定と内定の違いは既述しましたが、採用スケジュールが固定されている日本では、他社と内定が出される時期が重なるため、内定辞退のリスクが高いといえます。
自社に関して内定者が不安に思っていること、または期待していることなどを把握しながら、相談相手としてふさわしい自社社員と内定者の交流機会をもつなどの対応により入社までの動機づけをする必要があります。
求める人物像は、「自社が採用したい人材の特徴」です。一般的に優れているとか、面接官が個人的に採用したい人材ではなく、「自社」が採用したい人材の要件を社内で形成し、コンサスを得ることが重要です。
例えば、多くの会社が新卒採用サイトに、“求める能力:コミュニケーション力”と掲げていますが、ある有名IT企業は、「コミュニケーション能力は不要。尖る能力を1つ求める」と公表しています。
このように、求める人物像は会社によって独自性を帯びるものであり、決して他社と同様である必要はありません。
求める人物像を設定する具体例を簡単にいくつか紹介します。
その1 積み上げ型
事業計画や現場の声を参考に、求める能力や素質を積み上げて、輪郭を形成する設定方法です。
その2 モデル抽出
社内で活躍する社員を数名ピックアップし、その共通点を抽出して要件化する方法です。新卒採用の場合は、活躍している社員の新卒時のデータを用いるケースもあります。
その3 新規開拓
これまで自社に存在しない人材をベンチマークし要件化する設定方法です。新規事業や抜本的な経営改革の際によく用いられます。
求める人物像の明確化と並んで重要なのは、社内共有です。「採用したい人を採用してください」と指示が出れば、面接官によって合格基準はブレますが、例えば「前に踏み出す力のある人を採用してください」となれば、ブレが一定程度収まります。
採用を成功させるためには、さらにもう一歩踏み込んだ具体的なペルソナ(架空の人物像を形成し、その生活スタイルや趣味、行動特性なども設定する)を決定し、共有することが重要です。実在レベルで人物像が特定されることで、採用精度が大きく向上します。
この記事では新卒採用のスケジュールについて紹介しました。新卒採用のポイントにも触れておりますので、新卒採用の計画を立てる際にぜひ活用してください。
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