eラーニング(イーラーニング/e-learning)について、“知っている”または“聞いたことがある”という方がほとんどではないでしょうか。eラーニングは、electronic(電子)+learning(学び)=インターネットを利用した学びを指し、企業の研修など教育の現場で多く利用されている教育手法です。
eラーニングが普及し、英会話や社会人マナーなどの教育を映像コンテンツで提供することが可能になりました。これにより、対面に近い教育効果を担保しつつ、対面の研修等の代替によるコストカットも実現しました。
厚生労働省による令和2年度の企業調査(無作為抽出、6,000企業 有効回答率55.4%)では、社員の自己成長の実施方法として「eラーニングによる学習」が2位にランクインしています。
■自己啓発の実施方法(複数回答)
eラーニングの今後を見据えると、その市場規模は未だ成長途上との予想が一般的です。ある調査報告では、2021年の同市場規模は世界でおよそ2,140億ドルでしたが、2030年には11,500億ドル(2021年の5倍以上)に達すると予想しています。
また、eラーニングはそのフィールドが“パソコン”だけでなく“スマホ”にも普及しつつあります。端末がパソコンからスマホに変わることで、より一層 “場所と時間に捉われない”学習・教育環境が実現され、更なるeラーニングの拡大が期待されています。
インターネットへ接続できれば、出勤の電車の中で学習することや、家のソファの上などそれぞれ自分に合った時間帯・場所で学習を進めることができます。
また細かく学習サイクルをまわすことができ、すき間時間を活用した効率的な学習を進めることができます。
*学習端末がスマホになることで、eラーニングをmラーニング(モバイルラーニング)と呼ぶこともあります。
eラーニングの実施形態は大きく以下の3種類に分けられます。
■eラーニングの実施形態
実施形態名 | 概要 |
オンデマンド | 録画された動画の配信による教育 |
ライブ | リアルタイムの配信による教育 |
オンデマンド+ライブ | オンデマンドとライブを合わせた配信による教育 |
近年ではWeb会議システムを用いて、ライブ型で実施することもありますが、“eラーニング”というときは、オンデマンドを指すことが一般的です。
*これ以降も、基本的にはオンデマンドのeラーニングを前提としてご説明します。
eラーニングの提供形態は、クラウド型とイントラネット型に分けられます。
■eラーニングの提供形態
提供形態名 | 概要 |
イントラネット型 | 自社サーバーで管理(セキュリティは高いがアクセス不便) |
クラウド型 | クラウドで管理(セキュリティは相対的に低いが、アクセス便利) |
イントラネット型は、自社のサーバーにアクセスする必要があるため、リモートワークなど、オフィスを離れている社員にはそのアクセスを認めていない企業や、認めていても接続に手間がかかることもあり、クラウド型を採用する企業が増えています。
社員研修でeラーニングを用いる代表的なメリットを4つ紹介します。
eラーニングはインターネット環境とデバイスさえあれば受講できるので、場所や時間を選びません。例えば、集合型の研修はある特定地点に特定時間に集合する必要がありますが、eラーニングは好きな場所で好きな時間に受講することが可能です。移動時間も不要になるので、社員は時間を有効利用することができます。特に、リモートワークが浸透した今日の働き方において自己研鑽の学習手段として最も有効な手段です。
eラーニングは、理解できなかった部分や重要箇所を繰り返し視聴することができます。反復学習が可能となることで、理解が深まるとともに、分からないまま講義が先に進んでしまい、学習に対するモチベーションが低下することを防ぐことができます。
一般的な知識やスキル習得は、型を習得するまで学習を反復することが求められ、実業務の中でうまくいかなかったことを振り返り、再度eラーニングで学習することが有効です。
eラーニングは学習継続の物理的な壁となる「決まった時間に学習時間を確保できない」「学習についていけなくなった」といったデメリットを大幅に解消することができます。学習を継続できることで、学習効果(達成感・自己肯定感)を覚え、学び続ける動機を形成しやすくなります。
さらに、学習を継続できなかった場合でも、eラーニングはその外的要因が排除されているため、社員が自責を認識し改善の必要性を理解することもできます。社会人は、“学ぶことを習慣化”する必要がありますので、eラーニングによって学びを習慣化するフレームを学ことができます。
eラーニングは受講状況・成績がシステム上で一括管理され、可視化されるため、社内の管理工数が大幅に削減されます。学習し、現場での実践を促すという本質的な活動に時間を割くことができるようになります。
また、社員も自身の得意・不得意分野や、現状を把握できるため、業務のPDCAを回しやすくなるメリットがあります。
eラーニングは視聴学習がメインなので、体験型の研修や社員同士で議論し理解を深めるワークには向いていません。ただし、体験型については、VRなどの新しい技術の実用化が進んでおり、今後は解消される可能性があります。
【デメリットへの対応例】
研修には様々な教育目的があり、それに応じて研修コンテンツも変わります。eラーニングが適しているコンテンツと対面が適しているコンテンツを整理し、その実施方法を分けることで、効率的な研修運営が可能となります。(詳細後述)
eラーニングは時間も場所も自由なため、裏を返せば学習にあたって社員の自己管理が必要です。無計画に始めたり、計画を先延ばしにするのでなく、自分自身で実現可能な計画を立て、着実に実行する習慣をつけるように促すことが求められます。
【デメリットへの対応例】
社会人になると、計画立案能力や納期厳守のタイムマネジメントは必須となりますので、eラーニングを良い“機会”と捉え、学習コンテンツを学ぶだけでなく、その学習スケジュールについても自己管理能力を向上させる訓練として、社員に意識させることで、社員がコミットしやすくなります。
こちらでは、社員にeラーニングを効果的に実践してもらうための、企業側のアプローチ方法を紹介します。
研修の“やらされ”感を払拭するために、学習の必要性を丁寧に説明し、動機付けをすることが重要です。例えば、配属後に先輩や上司が多忙な環境をイメージさせつつ、
・同時に複数の指示や依頼がある中で、何から取り組むべきか判断できるか ・どういった業務シーンにおいて、論理的思考力を活用できるか ・効率的なExcelの使い方を理解し、実践できているか |
などの投げかけをして、“分からない”、“自信がない”自分を社員に自覚させることで、動機づけることも効果的です。
繰り返しになりますが、新入社員であれば配属後は自律的な行動が求められるため、その練習として、計画と実行する力を養う必要があることも伝えましょう。
同じ学習コンテンツに取り組んでいるメンバーでチャットグループを作り、そこで学習に関する相談(回答の相談ではない)などをすることで、互いに刺激を受けながら学習を進められます。
また、学習終了後は、その成果や得た気付き(学習内容や自己管理の方法なども含めて)を意見交換することで、PDCAの実践が可能となり、社会人全般に通じるフレームワークを学ぶこともできます。
既述の通り、eラーニングは時間と場所を選ばないメリットがある反面、計画的に学習を進めるための自己管理が必要です。企業側からeラーニングの受講期限を提示し、“おしり”を決めることで、社員が計画を立てやすくなり、自律性や自己管理能力の向上(成長)を促すことができます。
また、eラーニングは学習分野やレベル等により学習コンテンツが分かれていますので、期限に加えて、【対象となる社員】と【学習コンテンツ】を明示して、進捗状況をフォローすることをおすすめします。
ここまでeラーニングのメリット・デメリットについて紹介しましたが、自社の研修において、「eラーニング」を活用すべきか、「集合研修」を実施すべきかお悩みの方もいると思います。
研修には、その両方をいいとこ取りしたブレンディッドラーニングがおすすめです。
ブレンディッドラーニングとは、複数の学習形態を組み合わせて、それぞれの学習形態のメリットを活かし、デメリットを補完する学習形態を指します。ブレンド型学習と呼ばれることもあります。
最も一般的な組み合わせは、「集合研修」と「eラーニング」です。例えばアパレル業A社が新入社員研修で、「商品名や種類の知識獲得」と「接客スキルの向上」を図りたい場合、それぞれに適した研修の実施方法は以下の通りです。
■A社(アパレル)の新人研修
新入社員研修で獲得すべきこと | 研修の実施方法 |
商品名や種類の知識獲得 | eラーニング |
接客スキルの獲得 | 集合研修 |
上記のように、知識はeラーニングによって、接客スキルは集合研修によって、効果的・効率的に学びます。また特に知識獲得について、近年では反転学習が注目を浴びています。
■従来の学習と反転学習
インプット | アウトプット | |
従来の学習 | 対面講義(集合研修) | 課題や問題集を解く(個人学習) |
反転学習 | eラーニング(個人学習) | 不明点解消、発言・発信(集合研修) |
上記の通り、反転学習は理解できない箇所を個人学習で明確にした上で対面機会にて質問できるため、知識の吸収効率が高く、さらに発言・発信(アウトプット)することで、知識の定着や応用力を効率的に獲得できます。
事前学習として社員自身でeラーニングによりインプットを行い、集合研修(対面の場)で個別フォローを受け、またはアウトプットする手法を反転学習といい、ブレンディッドラーニングの代表的な学習方法となります。
比較的平易な基本事項は、一人でインプットすることが可能な上に、eラーニングを用いることで学習状況が可視化され、理解が難しい箇所を明確にすることができます。
さらに、対面での研修を活用したアウトプット機会を設計することで、インプットしたことの定着や場合によっては修正をすることができます。また不明点がある場合は、対面機会に該当箇所をピンポイントで質問することも可能になります。
研修目的によって複数の研修コンテンツが生まれますが、目的に応じてeラーニングが最適な場合と、集合研修が最適な場合が異なります。
どちらか1つの研修方法で全てのコンテンツを実施するのではなく、ブレンディッドラーニングを実施することで、それぞれの研修目的を高いレベルで達成することが期待できます。
昨今ではアフターコロナでもリモートワークを導入する企業も多く、自社は出社を伴う勤務体制であっても、顧客や取引先の事情によってオンライン対応も余儀なくされる可能性が高まっています。
そこで、研修でもオンラインと対面を織り交ぜて教育することで、配属後も違和感なく現場に着地することが可能となります。
ブレンディッドラーニングを実施するにあたり重要となるeラーニングの選び方について、そのポイントを3つ紹介します。
eラーニングを選ぶ際に最も重要なことは、社員が興味を持って見続けられる内容であることです。ホワイトボードの前に立って単調に話を続けるような動画は社員に飽きられやすく、おすすめできません。
例えば、ドラマやシナリオ仕立てになっており、“共感できる”“ストーリー性がある”など、社員を飽きさせない工夫をしている動画コンテンツを選ぶことをおすすめします。
eラーニングはインプットがメインになりますが、本当の学びは、アウトプット(考える・成果物を作成する)ことでしか生まれません。
動画を視聴中に課題が課されることや、動画の最後に確認テストがあるようなコンテンツは、社員の学びを深め、教育効果を高めることに役立ちます。
このような課題に取り組むことで、社員は“分かっていること”と“できること”の差を理解し、学習意欲をさらに高めることができます。
eラーニングのメリットとして、社員(受講者)の受講状況・成績がシステム上で一括管理されることによる研修管理の効率化を挙げましたが、このシステムはLMS(Learning Management System)と呼ばれます。
ただ情報が一元管理できるだけでなく、
「グラフ等見やすい形で個々の学習時間が可視化されているか」
「受講者が疑問点を聞くことができたり、管理者が受講者をセグメント毎に分けてメッセージを送れるようなオプションがあるか」
「入社年度や拠点(支店や店舗など)毎にデータを抽出できるか」
など、管理・運用しやすいシステムであることが重要です。
研修におけるeラーニングの活用方法を紹介しました。eラーニングを正しく導入することで、社員の教育効果向上のみならず、企業もコストカットや業務効率化を実現することができます。「eラーニングの選び方」で紹介しましたが、eラーニングの導入において、動画コンテンツを慎重に選ぶことは大きなポイントの1つです。
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